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3.「智者の慮(りょ)は、必ず利害に雑(まじ)う」
マンションの管理をする上で、よくありがちなことですが、つい、主観的で一面的な判断をしてしまうことがあります。例えば、共有敷地の駐車場の収容台数が不足しているとします。管理組合としては、何とか駐車場を増設したいと考えます。
しかし、増設するとなると立体化が考えられますが、工事費も格段に高くなります。立体化をすると、日照や景観の問題も出てきます。また、駐車場の利用料金を大幅に値上げするにも、かなりの抵抗があります。
このような時に、一つのことだけを考えるのではなく、総合的に物事を考える必要があると思うのです。孫子のこの言葉は、「智者は必ず利益と損失の両面から物事を考える。」ということです。つまり、「利益の中に損失を見出し、損失の中に利益を見出す」という姿勢が必要です。視野を広く持ち、利と害の両面から物事を考えることが大切だと思うのです。
この例で言えば、果たして、駐車場を増設することだけを考えて良いのだろうか? と疑問を持つことです。 確かに、駐車場利用を待機中の人たちは喜んでくれるかもしれない。しかし、現に駐車場を利用している人たちには、必要のない話なのかもしれない。ましてや、自動車を保有していない人たちは、どう考えているだろうか? 今後とも自動車を保有するつもりのない人たちは、迷惑な話かもしれない。
基本的には、管理組合の役員は、マンションに居住する全員にメリットのある施策を進めていかなければなりません。単に駐車場利用を待機中の人たちの不満を解消することだけを目指すのであってはなりません。
マンション内の不法駐車を無くすためには、どうするか。消防車や救急車の緊急活動に支障をきたさないようにするには、どうするか。ゴミ収集車がゴミ収集作業をしやすくするためには、どうするか。そして、不法駐車により、道路の見通しが悪くなっているために、幼児や老人等の交通事故の危険性を少なくするには、どうするか。さらには、排ガス対策として、駐車場とグリーンロード、または駐車場とマンション建物の間を、植え込み等でさえぎるように配慮したものでなければなりません。こういったことを総合的に検討することが大切です。
管理費や修繕積立金は、一部の人たちのためだけに使うものではありません。利用料金を値上げした結果、それはマンションに居住する全員にメリットがあるような施策にしなければならないと思うのです。増収となった駐車場収入は、管理に必要な費用に充てた上で、「決算時に余剰が生じた場合は、総会の決議により修繕積立金として積み立てることができる。」旨を管理規約に定めれば、自動車を保有しない人たちにもメリットが出てきます。
「智者の慮は、必ず利害に雑う」。ぜひ、このバランス感覚を管理組合活動にお役立てください。
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