マンション管理組合の”身近な町医者”のように…

マンション管理の兵法書


8.「それ虎のよく狗(いぬ)を服する所以は爪牙(そうが)也」

これは、韓非子の言葉です。この後、次のように続きます。
「虎をして、その爪牙を釈(す)てしめて、狗をしてこれを用いしめば、虎反(かえ)って狗に服せん」と。つまり、「虎が犬を服従させているのは、虎に爪があり牙があるからです。もし、その爪と牙を虎から取り上げて犬に与えたとしたら、逆に虎の方が犬に服従しなければならない」という意味です。
権限を手放したり、人任せにすると、大変なことになってしまいます

標準管理規約(単棟型)の第48条には、「総会の議決事項」が定められています。
  
一 収支決算及び事業報告
  ニ 収支予算及び事業計画
  三 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
  四 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
  五 長期修繕計画の作成又は変更
     …(中略)…
 十五 その他管理組合の業務に関する重要事項
  
以上のとおり、十五までありますので、ご確認ください。

一方、標準管理規約(単棟型)の第54条には、
「理事会の議決事項」が定められています。
  一 収支決算案、事業報告案、収支予算案及び事業計画案
  ニ 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止に関する案
  三 長期修繕計画の作成又は変更に関する案
  四 その他の総会提出議案
     …(中略)…
  七 総会から付託された事項

  
以上のとおり、七までありますので、ご確認ください。

この、
「総会の議決事項」と「理事会の議決事項」をよく見比べてください。基本的には、「理事会の議決事項」は「案」を作ることであり、「総会の議決事項」はその案を認めるか認めないか決議することなのです。何か新しいことを始める場合や今迄してきたことを止める場合など、大きく方向転換をしようとする場合などは、理事会で「総会提出議案」を作ります。この時点では、まだ「案」です。それを総会で「管理組合の業務に関する重要事項」として議決されて初めて効力が生じます。つまり、「総会は最高の意思決定機関」と言われる所以です。
一方、理事会で何が議決できるかと言うと、新しいことを始める場合や今迄してきたことを止める場合など、理事会の意思だけで方向転換をすることはできません。ただ、「総会から付託された事項」について具体的な執行方法等が議決できるだけなのです。ここの違いを理解することが大切です。

理事会の権限と、区分所有者全員を対象とした総会の権限とを、明確に区分して、お互いに権限を越えないようにしておかなければ、前述の虎のようになってしまいます

主権在民…つまり、主権は区分所有者全員にあります。理事会は「役員の誠実義務等」に従って、「執行する機関」であると共に、前述の「提案する機関」なのです。

もっと分かりやすいのは、標準管理規約(単棟型)の第71条第2項の「規約外事項」です。

  
規約、使用細則等又は法令のいずれにも定めのない事項については、
  総会の決議により定める。


規約や使用細則等に定めのない事項まで、理事会や理事長の独断で決められていませんか?

標準管理規約(単棟型)の第36条第1項には、「役員の誠実義務等」が定められています。
  役員は、法令、規約及び使用細則その他細則並びに総会及び理事会の決議に従い、
  組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとする


管理組合の役員は、ワンマン会社の役員ではありません。最近、「理事長が暴走している」という住民からの苦情が増えております。

「総会の議決事項」が、理事長や理事会に侵されていませんか? 総会決議に無い事業計画を勝手に推進したり、予算を平気でオーバーしたりして、独断専行していませんか?