マンション管理組合の”身近な町医者”のように…

マンション管理の兵法書



15.「茶は服のよきように点て」

千利休の言葉に、「茶は服のよきように点て」という言葉があります。このあと、「炭は湯の沸くように置き」、「花は野にあるように」、「夏は涼しく冬暖かに」、「刻限は早めに」、「降らずとも傘の用意」、「相客に心せよ」と、七則が続きます。
あたりまえのことのように思えるのですが、これが全部出来る人がいたら、「利休はその方の弟子になりましょう」と言うのです。
頭で考えただけのことでは何の役にも立ちません。相手を観察して、現状を正しく認識して、相手の心を知って、それに合わせたおもてなしをすることが大切だという考え方です。

管理組合の総会などで、理事を経験していない者に限って、「理事長ならこれくらいをするべきだ」とか、「理事長ならそれをやって当然だ」とか、よく聞く言葉です。「それなら、あなたが傍から手伝ってあげなさいよ」と言いたくなります。
管理組合の理事たちのすることに批判をする…までは良い。「それなら、あなたも理事に立候補して、それを改革してはどうですか?」と言うと、ほとんどの人は何やら理由をつけてやろうとしない。

もしかしたら、その人は現状を正しく認識しないまま、建前論ばかりを強調しているのかも知れません。現状認識にズレがあるかも知れません。実際に、やってみて、現状を正しく知る必要があるのではないでしょうか。それに目を向けずに建前論ばかりを強調しても、相手の心に届きません。「こうするべきだ」、「ああするべきだ」と言っても、現実には対応しがたいこともあります。その人の不満は相手に届かず、理事にとっては「出来もしないことを言っている」と思われているのかも知れません。これでは少しも問題解決になりません。

「それなら、せめてあなたの意見に同意してくれる方は、何人位いらっしゃるのですか?」と尋ねると、「ほとんどいない」と答える。
改革は、決して一人ではできません。過半数の人たちがあなたに同意しない限りは、動きません。己は何もせず、「こうするべきだ」、「こうあるべきだ」と口角泡を飛ばして不満を言っても、何も解決しません。

まず、自分から動いてみてください。そうすれば、理事たちが何故それをしないでいるのか、そして、何故今のようにしているのかが分かってくると思うのです。もしも、主張が正しいのであれば、多くの人たちの心も動くでしょう。

今まで、頭で考えていたことと現状とは、かなり異なっているかも知れません。実際に詳しく観察してみて、現状を正しく認識し、真の原因を知ってこそ、問題解決の鍵が見えてくるものです。
さあ、行動しましょう。
あなたが動けば、相手の心にも伝わっていきます。いっしょに汗をかけば、理解しあえることがたくさんあると思うのです。