マンション管理組合の”身近な町医者”のように…

マンション管理の兵法書



16.「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」

論語の中に、「故きを温ねて新しきを知れば、以って師たるべし」という言葉があります。歴史を深く探究することを通して、現代への認識を深めていく態度、これこそ指導者たるの資格であると、孔子が述べています。

マンションにも歴史があります。設計図書、修繕等の履歴情報、議事録、規約原本、会計帳簿などの管理が大切なことは言うまでもありません。「古いことよりも、これからのことが大切」と対応するよりも、「古いことを知った上で、これからのことを考える」ことは大切だと考えます。

例えば生活に密着した事例として、十数年に一度の大規模修繕工事などは、過去の工事の時の記録が無ければ苦労します。ベランダに洗濯機を置いているマンションは、十数年前の大規模修繕工事の時に、どのように対応しただろう。ベランダ防水工事の間は、洗濯機が使えません。コインランドリーを使うと言っても、ご高齢の方が毎日洗濯物を持ち運ぶにはお気の毒です。
このような時、新しく入居した役員ばかりで話し合うのでなく、古くから住んでおられる方たちから、過去の対応を聴いてみると、意外と良い解決策が浮かぶものです。
また、エレベーターが1基しかないマンションのエレベーター更新工事はどうしたら良いのだろう。工事の間は、重い荷物などをどのようにして運んだら良いだろう。このような時は、一つのマンションだけでは過去の事例がありませんから分かりません。
過去に同じ状況で更新工事を行ったマンション管理組合に聴いてみるか、業者に相談してみるなど、ネットワークを利用して情報を入手しなければなりません。

難しく考えないで、大規模修繕工事やエレベーター更新工事などの記録を、デジタルカメラなどで記録してみてはいかがでしょうか? その記録をCDにして、管理組合で保管、管理していれば、他の管理組合などから問い合わせがあっても対応できますし、役立てていただけるのではないでしょうか?


もちろん、時代は変わっていきます。対応の仕方も時代と共に変化するでしょう。それでも、過去の事例の中で、住民たちが知恵を絞った歴史を参考にして、これからに役立てていくことは、大切なことだと思いませんか?