「孫子」行軍篇の一節に「衆樹(しゅうじゅ)の動くは来たるなり、衆草(しゅうそう)の障(さわ)り多きは疑なり、鳥の起つは伏なり、獣の駭(おどろ)くは覆(ふく)なり」とあります。 1083年に始まった後三年の役で、源義家は雁が列を乱して飛び去るのを見て、孫子の一節から「鳥が不意に飛び立つのは伏兵がいる証拠」と気付き、付近を捜索させた結果、伏兵を発見し、撃退したという有名な話があります。 日常と異なるわずかな現象から、危機管理を行うことが出来れば、大事故は防ぐことができると思うのですが、これが結構難しいものです。私事で恐縮ですが、実はこのような恥ずかしい話がありました。ある朝、目を覚まして歩こうとしたら、歩けないのです。足の親指のまわりを中心にして、パンパンになった感じで、痛くて痛くて、立てないのです。てっきり足の指の骨にヒビでも入ったのかと思い、やっとの思いで病院に行きましたら、「痛風」だという診断でした。「以前から、尿酸値が高かったですね。」と医者に言われ、そうだったかな?と過去の健康診断書の綴りを開いて見てみると、何と13年も前から異常値が表示されているではありませんか。しかも、目立つようにその欄に「*」印が付いています。痛くなって初めて気が付く、数値だけでは気が付かない…そんな情けない自分を笑ってしまいました。 管理組合にも似たようなところがありまして、少しの異常の現れに早く気が付き、早く手を打つことが大切です。ところが、「まぁ、大事には至っていない」とか、「私の役員の任期切れまでには何事もないだろう」とか、勝手に判断して放置しているケースが多いものです。「少しの異常」の兆候から「大騒ぎの事態」になるまでのスピードは速いものです。それこそ、「ある朝突然」に「大騒ぎの事態」となります。 少し注意してアンテナを張り、早目、早目の心配りをお願いします。住民に知らせた方が良いのかなぁと少しでも感じたら、回覧したり、掲示したりして伝えることを考えましょう。危険な事や心配な事があれば、次の理事会を待つことなく、理事同士連絡をとって相談しましょう。難しいことがあれば、勝手に判断せずに専門家に相談しましょう。マンション・セミナーや管理組合ネットワークなどの会合があれば、積極的に参加して勉強しましょう。 痛くなって初めて気が付くようなことがないように、くれぐれもよろしくお願いいたします。何事もなく無事に任期を終わらせても「当たり前」と評価されがちですが、結構大変な役目なのです。