理事会を相手に、孤軍奮闘している組合員を見かけます。話をお聞きすると、なるほど正論を述べておられます。ただ、周りの組合員が無関心であるとか、理事会にもいろんな意見の理事がいるなどで結論が出ないとか、やりたくてもどうしてよいか分からないとか、すぐに対応できない理由があるようです。そうなると、孤軍奮闘している組合員はイライラして、理事会に対して何度も意見書を提出したりします。意見書も要点を2つ、3つにまとめて書けば理事会が回答しやすいのでしょうが、10とか20とか、たくさんの質問を投げかけてしまいます。もうそこまで行くと理事会にとってはその組合員をクレーマーのように見てしまいます。確かに、その組合員も感情的になってきて、「何とか理事会をギャフンと言わせてやろう」というような気分になってしまいます。最初の「目的」は良いにしても、その「手段」が必ずしも良いとは言えないのです。だから、周りの組合員達も、その組合員の意見にはついていけなくなり、ますますその組合員は孤立してしまいます。 そんな時、孫子のこの言葉を思い出してください。「兵を用うるの法は、国を全うするを上となし、国を破るはこれに次ぐ」と…。相手を痛めつけ、たたきつぶそうとすれば、そうはさせまいと、相手も激しく抵抗してくる。したがって、どんなにうまく戦ったところで、自分の方も相当の損害を覚悟せざるを得ません。理事会をいくらギャフンと言わせても、あなたの望む方向に管理組合が動かなければ何にもならないではないですか。あなたも相手も、このマンション内で一緒に生活していくご近所さんです。 マンションは民主主義の学校だと思います。管理組合は、組合員の総意で決まります。だから、あなたのその主張を多くの組合員が理解してくれて、賛同してもらえるようになるように努めてください。敵を作るのではなく、多くの味方を作ってください。多くの味方を作るには、あなたも多くの人たちの意見を謙虚に聴きましょう。反対意見の方の話にも耳を傾けてみましょう。あなたの主張に修正の必要がないかどうかも考えてみましょう。時間はかかるでしょうが、本当にあなたの主張が正しいのであれば、賛同者が増えてくるはずです。周りの組合員達があなたを支援するかどうかは、あなたの言動にかかっていると言っても決して過言ではないでしょう。 一方、理事会の方や周りの組合員の方々も、少し考え直してみませんか。民主主義とは単に多数決でものごとを決めていくことを指すのではないはずです。一人一人の意見を大切にすることが民主主義のはずです。小さな意見にも真摯に耳を傾けてみませんか。きっと、より良いヒントが隠されていると思います。マンションは民主主義を学ぶ場でもありますし、本舞台なのですから…。